タバコNOケムリFX(仮)
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蚊取り線香
高校のときからの友人のナカムラくんはわたくしの寮から徒歩1分くらいの寮に住んでいました。近所ってことも あり頻繁に彼の部屋に遊びにいく機会が多かったんですが、この寮もわたくしの寮と同じくらい、いやそれ以上に 先輩後輩関係なしにみんな仲が良いという雰囲気でした。なのでわたくしも必然とみんなと仲が良くなりなかなか 楽しい日々を送っていました。
そんななか、「ウィーンくん」という子がいました。もちろんあだ名です。ちなみにそのあだ名の理由は、偶然 の部屋割りでたまたま住むことになった部屋の扉を開けると「ウィーン」と音が鳴る ただそれだけでした。逆を いえばわたくしの友人のナカムラくんがその部屋に住むことになってたら必然的に彼が「ウィーンくん」になって いたはずです。
そんなウィーンくん、年齢はひとつ上なのですが学年は同じでした。ようは一浪してたってことです。そんな彼の 性格は静岡出身というご当地柄なのかとても温厚でいつも笑顔を絶やさない明るい性格でした。どんなことをしても 決して怒るということがなく、もともと平和的な考え方だったのかもしれません。
しかし唯一不機嫌になるときがありました。それは寝起きです。それも睡眠不足の寝起きだとかなり機嫌が悪くなり 当然シャレも通じなく、なにをいっても怒鳴り散らしモノを投げるという極端な2面性を持っていました。当然同じ 寮に住む他の人はかなり迷惑でいつか仕返しをしてやろうともくろんでいたらしいです。


そんななか、たまたまわたくしが遊びにいった時、ウィーンくんはバイトに出かけていたらしく彼以外の住人が ローカでなにやら話をしていました。「なに?みんなしてローカで?」とわたくし。「うん、実は・・」

どうやらあまりに極端な性格のウィーンくんを懲らしめてやろう という計画をたてている最中でした。
時は夏、常に玄関が開きっぱなしの開放的なこの寮、わたくしだけでなく犬も猫もそして蚊も自由に出入りできる ようになっています。なので夏場には誰が提供したのか分からないですが常にローカには複数の蚊取り線香がなぜか 懐かしいケムリの匂いをたててそよ風に揺られています。
「で、どうするの?」とわたくし、興味深々です。ヒマな大学生、今思うともっと他にやることがあるんじゃないか と思う方もいるでしょう。しかしこの手のいたずらほど興味を抱いてしまうのがしょせんは三流の大学生なのです。 そんな彼ら、寝起きのウィーンくんをさらにキレさせる方法を編み出していました。使用するのは蚊取り線香と 爆竹です。蚊取り線香の燃焼時間はおよそ8時間、これを逆算して何時間後に燃え尽きるのか設定してその最後に 爆竹の導火線をセットする という即席の時限爆弾です。そうすれば誰がやったかバレないしわざわざ朝早くから 爆竹を鳴らすためだけにウィーンくんの部屋の前に来なくてもいいからです。
そうしてこの蚊取り線香爆弾を製作するグループとアリバイを作るグループ、そしてウィーンくんの明日の予定を 詮索するグループに分かれました。

爆弾製作班は近所のコンビニで爆竹を購入し、ウィーンくんの明日の予定情報を待ちます。
アリバイ班は常に出しっぱなしの玄関の靴をいかにも全員いるようにみせかけて、さらに全員就寝してるように 台所やローカの電気を消します。
情報班はウィーンくんと同じ学科の人間とアポを取り、彼が明日最初に出る講義を調べて時間を製作班に教えます。 情報を知った製作班は逆算して熟睡間際と起床間際(2段階攻撃)に爆竹が鳴るように蚊取り線香を細工します。 そしてセット完了、あとはウィーンくんがバイトから帰ってくる時間までに全員部屋の鍵をかけてアリバイ完了 です。そうして寮のみんなはそれぞれ友人の家や恋人の家、そしてもちろんわたくしの寮に一時避難するひとも いました。今回の外出時の靴は、ちょっと値段が高めな普段は部屋にしまってあるやつで、これもアリバイ工作の ひとつです。

そして次の日、そのまま講義に出る人や休みな人、バイトな人もあったかもしれませんが、普通に1日を過ごして 寮に戻ってきました。ここからは聞いた話なんですが、予定通りウィーンくんがかなりキレた痕跡があったよう でした。空き缶やごみが散乱してて彼が蹴ったか殴ったと思われる壁の穴、そしてどうやらこの日は彼は講義に 一切出なかったようです。数日間部屋に閉じこもっていたという話でした。

それから何日か経ったある日、いつものようにヒマに任せてナカムラくんがいる寮に遊びに行きました。ウィーン くんともそこで久々に会って話をしましたがいつもの温厚な眼差しと素敵な笑顔がありました。こっそりとナカムラ くんにその後の経歴を聞いたところ、引き篭もりが終わってからはそれまでのいつもと変らない彼だったみたいです。

それ以降はこの話題はウィーンくんがいる前では一切喋らない という暗黙の了解が出来つつありました。しかし 彼がいないところではかなり盛り上がるネタのひとつとなっていました。(通称:ウィーン伝説)

で、肝心の彼の寝起き ですが、以前ほどではないけどやはり機嫌が悪いのには変わりない ということでした。
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