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「げ」・・幻滅 人間というのは勝手な生き物であるので、一旦素晴らしい≠ニ思い込んでしまうと なかなかそこから抜け出せない。そしてあるとき、今まで見えなかった真実や予想外の事実を 目の当たりにすると(ま・・まさか・・うぅぅ・・こんなはずでは・・・)と 肩をがっくりとうなだれてしまう。 清純で素直な可愛い子だと思っていたら、道端にぺっぺっとツバやタンを撒き散らしていたら かなり幻滅するだろう。 今風のかっこいいイケメンだと思っていたら、平気で人前で屁をかますわ鼻くそほじっていたら きっと幻滅するだろう。 こんな経験は多かれ少なかれ誰にでもある話だと思う。内容は違うだろうが、それが少年期だと (ちぇっ、オトナはずるいな)などと、現実を知るというプラス面もあると思う。 いい大人になってくると、経験値もそれなりにレベルアップしているので、それほど幻滅する 状況もなくなってくる(と思う)。あってもそこはオトナであるのでやや打たれ強くもなっている はずである。 しかし、これが多感な思春期の幕開けの頃、男の子は声変わりが始まり女の子は胸のふくらみが気になり、まさに今 大人の階段を昇ろうとしている時期の「幻滅」は、現実にぶち当たるダメージとしては非常に 心深くダメージを被ることになることが多い。しかもこの「幻滅」が異性に対する事柄であると、 さらにダメージは地震の2次災害のようにとどまることを知らず、もう手のほどこしようがないほど 心身共に萎えてくる。場合によってはその強烈な経験が後にトラウマとなってしまう可能性も秘めているので やたらめったとタチが悪いものであるのだ と、あえて断言してしまおう。 あれはわたくしイバが中学生の時であった。つい数年前まで道端に落ちているエロ雑誌の写真を見ても (なんでこの人は裸で大股開きをしているんだろう)と疑問を抱いていたイバも、同じ写真を 見れば(おぉっ!すげぇ!)などといらぬ想像を欲望の限りに妄想しつつ(うっ、いかんいかん)と 股間を押さえつつ前屈みで歩くような青春の始まりであった。思えば成長したものだ。 校内のトイレへ行けば互いに若き暴れん棒≠覗きあっては「生えてる?な〜んだ、まだかよ」「6組の ○○、ボーボーだってさ」てな会話が密か(ではなかったかも)に交わされていた。 かくいうイバも思春期初期特有(?)の大人になる証のひとつであるチ○毛はそれなりに生えてきて (よしよし、オトナへの列車に乗り遅れてはいないな)などとホッとしていた。しかし、どうしても 生えてこなかった場所があったのだ。それはワキ毛であった。今思うとそんな余計なもの 一生生えてこなくてもいいのに と思うのだが、当時のイバはこれが軽いコンプレックスの ひとつでもあったのだ。 まさに一喜一憂、思春期の階段を腰に手をあてて♪スキップスキップランランラン♪などと昇っていくうちに、 ついにイバは初恋(多分)なるものに出会ってしまったのである。 実際のところ、当時はそれが恋なのかどうか知る由もない。なにか気になるんだけど好き≠ニいう 気持ちとはどこか違うものであったような気がする。うまく説明できないが、そういうよくわからない 感じは思春期初期にあるモヤモヤホンワカした独特のもので、恋≠ニは微妙に違うモノである気がする。 とまあ、それはともかく、なぜか気になる存在であったのは確かで、授業中もチラチラその子 (仮にA子ちゃん)を眺める日々が続いたのだ、う〜ん、青春っていいなぁ〜。 A子ちゃんは頭も良く、性格もおっとりしていて、男子女子分け隔てなく話す子で、 そういうところからも人気者であった。そういうのもあって、きっと思春期イバ(初期)でなくても 同じような想いみたいなものを抱いてる男子がいても少しもおかしくなかったと思う。 さて、季節は夏、それは掃除の時間の出来事である。 クラスの中は班分けされていて、だいたい5人か6人でひとつの班として掃除当番とか給食当番とか ゴミ捨て当番とか分けられていた。 このとき偶然にもA子ちゃんと同じ班であった。先生の公認で同じ班として同じ行動ができることが とても嬉しかった覚えがある。A子ちゃんがいる班といない班の違い・・それは「男女隔てなく」 であった。普通この年頃といえば(ま、今は知らないけど)男子は男子、女子は女子でコンビを 組んで行動するものであった。女子はともかく、この世代の男子というのはまだまだコドモで 女子と行動するのが照れくさいモノであったのだ。(一部そうじゃないストレートやヤロウもいたが) しかしながら我が班には男女平等主義のA子ちゃんがいる。もちろん班でリーダーだったので 仕事の割り振りは全て彼女が仕切っていた。優等生で人気者の意見には男子といえど逆らうことも なく、「うん、わかった〜」と、当然のように行動をしていた。 そんななか願ってもない割り振りになったことがあった。掃除当番で窓拭きをA子ちゃんとイバが 担当することになったのだ。もちろん教室の中だから周りに人はいれど、公認で、二人で、同じ 行動ができるのだ。 これは嬉しい!願ったり叶ったりとはこういうことをいうのだろう、神様ありがとう! と、 都合のいいときだけ呼び出される神様もたまったものではないが、ここは素直にありがたがって おこうと感じたイバは、ウキウキワクワクで窓拭きをしていた。隣には同じく懸命に窓をふく A子ちゃん・・人生においてこれほど幸せな気分で窓拭きをしたのは、これ一度っきりであると 断定してもいいわたくしイバである。 水拭きをしてそれをバケツで洗って別の雑巾でカラ拭きという作業のなか、時に雑巾のやりとりで 手がふれあう幸せがあった。軽い会話をしつつ二人きりの共同作業をする幸せがあった。 たかが窓拭きごときでここまで舞い上がれるイバというのも相当なものであるが、やはり神様も馬鹿ではない。 幸福があれば不幸もセットになっているという世間の厳しい洗礼を、早くもイバに浴びさせてくれたのである。 バケツで雑巾を洗ってふとA子ちゃんのほうを見た瞬間、窓を拭く彼女のワキに思わず視線がロックオンして しまったのである。 ・・毛・・・ワキ毛が・・・しかも・・・・ ・・・ボーボーじゃん・・・ イバが幸せの絶頂から、一気に奈落の底まで落ちた瞬間である。 そう、幻滅の瞬間であった。 これはかなりショックであった。恋≠ニまではいかないが二人で行動するだけで舞い上がるほどの 相手に、想像さえしていなかった現実を見てしまったのである。しかも男子であるイバでさえ 全く生えていなくちょっとしたコンプレックスだったモノを、彼女はそこらの男子よりも立派な 草原≠ニして文字通り「脇に抱えて」いたのだから。 痛恨のダブルショックで思春期初期状態のイバは、心に深〜い傷を負ってしまったのはいうまでもない。 神様・・そりゃないぜ・・。 追伸:おかげさまでワキ毛は高校進学くらいから生えてきました ↑ ↑ ↑ どうでもいいっちゅうの! |