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「ろ」・・ロマン いきなり関係ない話で申し訳ないけど、「ローマは1日にしてならず」というのを 「老婆は1日にしてならず」とコメントしたのは誰だっけなぁ・・。 ローマ時代の歴史や建造物・装飾品にはロマンを見い出せても、老婆には歴史こそ見い出せるが、 ロマンにはほど遠い。 だいたい「ロマン」なんて言葉、ちゃんとした意味を知っていないまま使っているけど、 果たしてどんなことを記しているかちょっと調べてみた。 「ロマン」・・小説。物語。夢や冒険に満ちた事柄。 だそうだ。しかし語尾が変わると若干意味合いも変わってくる。 「ロマンチック」・・非現実的な甘い美しさを求める様子。 「ロマンチスト」・・ロマンチシズムを奉じる人達。特に芸術家の一派。 だそうだ。まあなんとなく分かるような気がする。しかしここでいうロマンチシズムとは 何なのかといえば、「18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパに起きた文学・美術上の 思潮」なのだそうだ。 ということは、少なくとも「俺ってロマンチストだからさぁ〜」とか「彼ってロマンチストなのね」 なんていうちょっと現実離れをした生き方を求めている奴とかいわゆる夢追い人なんてのは、 言葉の持つ意味から考えればロマンチストではない。 200年前の文学や芸術を追い求めているハズもないのだから。 そういう困ったちゃんは、きっとロマンチックな生き方を求めているのだから「ロマンチッカー」と 名づけてしまおう。 そんなロマンチッカーのお話をひとつ。(相変わらず前置きが長いなぁ〜) 高校の同級生だったSくんは、当時から自称「ロマンチッカー」と名乗っていた。 「チストじゃないよ、チッカーだよ」とこだわっていたのを覚えているが、果たして当時の彼が その意味を理解した上でチッカーと名乗っていたのかは不明だ。が、「チック・チッカー・チッテスト」 などと強引に意味不明な3段活用を用いていたから、きっとノリでチッカーと名乗っていたに違いない。 そんな彼は理想というべきロマンチッカーから程遠い大柄な身体、決して整っているとはいえない容姿、 不精な服装だったが、言葉を発すると意外なほど甘い美しさを求める 正統派ロマンチック的思想だった。 そんな彼とは妙に気があって、高校卒業後もよく会って討論をしていた。 しかしわたくしイバは大学生になったものの、Sくんは偏差値で考えてもほぼ無謀な大学ばかり 狙っていたので結果的には浪人していた。今思うとその挑戦すらロマンチックな挑みであったと 思われるが、現実は厳しい。高校卒業と同時に実家を出て古いアパートに一人暮らしを始めた現実が あったから、その思考はよりロマンチッカーになっていったように思う。よくいえばロマンチック だが、見方を変えれば単なる「現実逃避」だったように思う。 そんなSくんのアパートに初めて遊びに行ったイバは、その部屋の様子に驚愕した。 万年床の布団を中心にあふれかえる生活道具とゴミの山、足の踏み場もないとはまさにこのことだ と思った。思っただけではなく実際に口にしたが、彼は「ん〜まぁある意味ロマンチックだろ?」 などと言葉を返してきた。う〜む・・・まあ確かに非現実的なところを見れば あの汚さはまさに非現実的だ。一体どうやったらここまで散らかるのだろうか不思議ではある。 甘党の彼の部屋のゴミのなかにはアイスやスナック菓子や チョコレートの箱などが散乱していたから、それを甘い美しさ≠ニ表現すればロマンチックなのかも しれないと思わざるを得ないわけでもないこともどこかに感じるわけがないような気がして ならないともいえない。(どっちだ!?) そんなゴキブリさえも床を這うことが出来ないであろう部屋で、なんとかスペースを 確保しつつ酒を飲みながら討論した。 勢い余ってそのまま繁華街へ繰り出すことになったのはいいけど、タクシー代をケチって 美川ケンイチの唄で有名なブルース街まで1時間歩いていったのもこの頃だった。 いくら討論しても彼の「ロマンチック」思考はイバには今ひとつ理解できないままであった。 結局1浪しても目指す大学に合格できなかったSくんは、親が移り住んだ浜松に暮すこととなったが、 車の免許を取得してからというものの、 突然電話があって「今イバの家の近くにいるんだけど」などと、相変わらずの行動のもとに会っていた。 イバは学生から社会人になり、職を転々としながら家出をして再び自宅に戻り、ようやく 落ち着きが見える日常生活を取り戻したある正月休みの年始の頃の話である。 イバのほうからSくんに電話をして彼の家に遊びに行くという気まぐれを起こしたことがある。 特に意味もなく、単にイバが暇だったからであるが、Sくんも暇だったらしい。 高速道路をぶっ飛ばし、浜松S.Aで待ち合わせをした。 そのあと浜松市内を観光して郊外にある彼の家に着き、なにはともあれ酒を酌み交わしていた。 初めのうちは互いの近況などを交し合っていたが、酔いが深まるにつれ彼独自の 「ロマンチック」的思考を繰り広げるわけだが、やはりイバにはいまひとつわからない。 わからないので反論するとさらに話は深く迷走していく。出口のない迷路をさまよっているかの ような討論は、仮想現実のなかで生きる引きこもりとその母親のような関係だ。 結局夜中の3時くらいまで討議をしていたが、互いにベロンベロンなまでに酩酊していたので そのまま寝ることになった。 このときにSくんが「絶対に!絶対に俺の部屋には入るなよ!」と念を押されてそのまま彼は 自室に消えていった。 わたくしイバはそのまま取り残された部屋で布団もなく眠ったのだが、さすがは浜松、冬というのに 凍えもなく、いや、逆に太陽の暑さで目覚めたくらいの晴天だった。 目覚めたはいいけどSくんの家であるのであまり勝手な行動は取れない。しばしSくんが目覚めるのを 待っていたが、前日の(正確には約7時間前)彼の言葉を思い出して(一体どんな部屋なのか 見てやろう)と、彼が寝ているであろう部屋の扉を目指した。 そっと扉を開けるとすぐ横にある棚や机に目がいった。それはここは倉庫か?≠ニ 思われるほどのおびただしい数のエロビデオとエロ本とエロDVDが乱暴に積まれていた。 まあそれはいい。男たるものエロ関係のひとつやふたつは密かに隠し持っているものだ。 ・・にしても、犯罪的要素さえも醸し出すべくすごい数だったのはちょっとびびった。 そして部屋の中心にある布団に目をやると、当然ながらSくんが熟睡していた。 しかし、思わず目を疑いたくなるその姿にイバは驚きと失笑を隠せなかった。 うつ伏せで両手を万歳した状態で寝ている彼の右手は割り箸を握り締め、 左手にはしっかりとキムチのカップを持っていたのだ。 (こいつ、キムチを食べながら寝入ったのか・・) この瞬間、あれほど討論しても明確な答えが出なかったロマンチッカーなSくんの理想像を、 箸とキムチを握り締めて熟睡しているその姿に、何がしか垣間見えたような気がした。 確かに非現実的で、まあキムチだから甘くはないものの、眠りに落ちる寸前まで食べ物を むさぼる幸せな美しさを求めている様子がそこにあった。 そんな今、なにはさておき、Sくんはまごうことなき「ロマンチッカー」だと認めてしまうわたくしイバであった。 ・・。ま、なんというのか、ただ単純に(いちいち細かいことはめんどくせぇなぁ)などと思っただけでは、ある。 |