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「よ」・・酔っ払い・・・特に普段はあまり飲まない人が過剰に嗜むと、 思いもよらない行動に出ることが多い。今回は大学からの友人であるY村くんのことを ネタにしようと思う。 大学時代、長期間コンビニでバイトをしていたのは既にご存知だと思う。このコンビニの 正社員や専務も含めて忘年会が行われたときの話である。 総勢約30人くらいの規模で、 とある焼き鳥屋で開かれた。その忘年会のハジケ具合は、まあごくごく普通 だったと思う。まだお酒の飲めない高校生を含め大学生、主婦、フリーターなどがわいわいと 飲んで食っての宴であった。このとき、普段はお酒を飲まないY村くんも気持ちよく酔っていたようだ。 焼き鳥の串を半分に折って鼻と下唇の間に挟みつつ座布団をザルに仕立てドジョウすくい なんていうバカ芸を初めて試みたくらいだから、きっととても楽しかったんだろうと思う。 そんな楽しいひと時もやがて専務による1本締めによって宴は終わった。そのまま帰宅する人も いれば焼き鳥屋の前でくっちゃべっている人もいる。そんななか、多分高校生連中が言い出した のだろうが2次会に行くことになり、競馬用語でいわゆる「テッパン」のごとくお決まりの カラオケ大会へなだれ込んだ。 ここまでの流れはごく普通の流れだ。そのときに車を出した人は確実に酒帯び運転なのだろうが、 まあおおらかな時代でもあったので誰もそんなことを気にする人はいなかった。 さて、場所はとあるカラオケボックスに移る。ここは県内でも主要の国道沿いに位置し、 夜中でも交通量が途切れることのない片側2車線の道であった。 お酒の飲めない高校生は歌いまくり、なかにはこっそり飲んでいる高校生もいたが誰もとがめない のは当然である。なにしろ年末ということもありみんなハイテンションで騒いでいた。 わたくしも当然チューハイかなにかをガンガン飲んでマイクなんていらないぜとばかりシャウト しまくっていた。むろん普段はお酒を飲まないY村くんも、さすがにウーロン茶にシフトしつつ、 しかしまだ顔が真っ赤のままオハコであったB'Zを歌いまくっていた。 さらにみんなお酒が進むと、次第にカラオケそっちのけで再び飲み会状態になっていた。 ふと気づけば高校生連中はいなかった。 時間は夜の10時過ぎだったのでさすがに自宅に帰されたのだと思う。 もっとも、お酒の飲めない高校生が、カラオケを妨害するくらいの勢いで騒ぐイバやY村くんらを 見て「やっとれんわい・・」という思いもあったのかもしれないが、 今となっては確認のしようがない。 結局この部屋のなかでソフトドリンクを飲んでいるのはY村くんしかいない状態だったのだが、 それにしてもこの夜の彼は妙なテンションだった。騒ぎまくっては部屋から出て行ってどこかに 消えたと思えばいつのまにかマイクを手にして唄っていたりする。しかしそんな他人の素行など お構いなしでギャアギャアと盛り上がっているわたくしらであった。 この無秩序状態は、完全崩壊した3年B組をはるかに上回り、さすがの金八先生でもお手上げだと思う。 しかし宴はいつかは終わる。ちょっとずつテンションが落ちてきて普段どおりの会話も可能になった あるとき、ふと部屋の入り口付近の隅、ソファの後ろで眠っている人を発見した。 同じ部屋にいるのに発見した というのはややおおげさに聞こえるが、まさに発見、もしくは 発掘という表現がふさわしかった。 Y村くんであった。しかもどこから持ってきたのか、お店の前によくある宣伝用の旗(ノボリ) を抱え込んでいた。 「ったくどこから旗パクってきたんだよぉ、Y村〜」 と、そのノボリを見てみると「フジカラー」と書いてあった。 「・・え?・・・」 このカラオケボックスの両隣は大型ディスカウント酒店と安売りの量産服屋である。この近辺で カメラ屋があるのは国道を挟んだ反対車線側だけである。 これは推測だが、片側2車線、オービスが仕込まれている立派な花壇のある中央分離帯、 真夜中でも途切れることがない交通量、制限速度は60キロだが夜ともなれば80キロ90キロで ぶっとばすトラックが走る国道を、Y村くんは横断して向かいのカメラ屋で旗を手にして再び このカラオケボックスへ舞い戻ってきたのであろう。 ありえない推測だが、彼が大事そうに抱え込んでいるフジカラーのノボリをゲットするのに 必要最低限の行動は、これしかなかった。 すっかり酔って寝入ったY村くんを起こして、その場は解散となった。彼の持っていたノボリは カラオケボックスの駐車場に放置したのはいうまでもない。あんなもの部屋に持って帰っても 邪魔である。 翌日バイト先ですっかり酒の抜けたY村くんに昨日の状況を聞いたところ「覚えてない」との ことだった。片側2車線の国道を往復したのも、ノボリをパクってきたのも、ソファの裏で 寝てしまったのも全く覚えていないという。ただ、焼き鳥屋でドジョウすくいをしたのは かろうじて覚えていた。しかしながら昨晩の彼の異常ともいえるハイテンションは なぜだったのかはこのときは本人にすら分からなかった。 だが、昨晩のカラオケボックスの料金を代表して支払いをしたY田さんが、レシートの明細を 持って割り勘請求をしてきたとき、この謎は解けた。 カラオケボックスで彼が飲んでいたウーロン茶は、実はウーロンハイであったことが 判明したのだ。 酔っ払いというのは、時として奇跡的な伝説を築き上げるものである。 しかも、完全にアルコールに支配されたからこそ、成せる業である。 教訓:ドリンクの注文は、再度確認をしましょう。 |