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「ほ」・・方言である。日本全国津々浦々、方言というのは誠に面白いものである。まあ、 そんなことを知ったのは青年になってからであるが。 わたくしが少年をやっていた頃は、自身も周りも使用している 岐阜弁が普通だと思っていた。(当然か) テレビやラジオで話している言葉とちょっと違うな、という程度の思いであった。 あとは年に数回、母方の実家に遊びに行くと、なぜかみんなよしもと新喜劇で話すような訛りで、 (あぁ、こんな言葉もあるんだ)と、少年ながらなんとなく感じていた。 そんな少年イバは、青年イバへと成長を遂げ、生まれて初めて日常的に県外で 暮らすこととなった。そう、大学進学のため福井県に4年間住むことになったのだ。 このとき、寮の管理人さんと会話をしたときは、まさに衝撃的だった。 (なんだ?このイントネーションは!?) 生まれて初めて福井弁というものを耳にした瞬間、たかが隣の県なのになぜこんなに発音が違うのか 不思議でたまらなかった。生まれて初めて聞くイントネーションであった。 笑いを取ろうとワザとこういう風にしゃべっているのかなぁ なんて ことさえ思ったが、どうやらこれがこっちでは普通であるみたいだ。 どういうイントネーションなのかを言葉で説明するのは難しい。東北弁に近いものがあるが、 それとはまた違う何かがある。 何年か前、モーニング娘。がダウンタウンのHEYHEYHEYという番組に出演したとき、新メンバーとして 高橋愛が加入した時の場面を覚えているだろうか。偶然その番組を観ていたイバは思わず 大学時代を思い出した。 (そうそう、このイントネーション、生粋の福井弁だなぁ)と肌で感じたものだ。 おそらくテレビ史上、全国放送のゴールデン番組で、生粋の福井弁をしゃべったのは このときの高橋愛が初めてだと自負する。言い換えれば世界初!である。見方次第ではギネスものである。 ダウンタウンが司会でなくても、きっとあのイントネーションにツッコミを 入れたくなるのは当然だと思ったものだ。 さて、そんな大学生活も2年目にさしかかったあたりには、すっかり福井弁も聞き慣れて・・ いや、聞き慣れざるを得ないとでも言おうか・・ ガソリンスタンドでアルバイトをしていた頃の話である。 このお店には所長と正社員のAさん、あとは全員バイトという構成になっていた。 このAさんというのが、現在の坂東英二をそのまま強引に20代後半に戻し、 そこにパンチパーマをあてた風貌であった。 当然直接の上司はこのパンチ坂東さんであり、ちょっとヤンキーが入っていたが、 基本的には優しい先輩であった。 ちなみに愛車はクラウンで車内はYAZAWAグッズてんこ盛り、流れる音楽はもちろんエーちゃんである。 そんなパンチ坂東さんは生粋の地元人で、バリバリの福井弁を自由自在に操るのだが、 たまに忙しい時間帯になると早口になり「イバ!★■〇≦#%!」と、聞き取れなくなることも しばしばあった。忙しい時間帯なので聞き直すことも出来ず、結果的に叱られるのだが、 早口になると本当に理解不能になるので困ったものであった。 あるとき、このスタンドから支店対抗ソフトボール大会に出場することになった。 このスタンドは県内でもけっこう大規模な企業が統括していて、交流を深める目的で そんな催しを企画しているようだった。練習なんて一切していないにも関わらず、上司である パンチ坂東さんの命令寄りのお願いを受けて、イバもその大会に駆り出されることになった。 正確には当日、所長は仕事(年中無休)で、あとは高校生のバイトばかりだったので 車を所有しているわたくしをアシとして強引にメンバーに加入させた というのが真の理由であった。 当日の朝、パンチ先輩のヤザワクラウンとイバの愛車FXの2台に選手全員が乗り込み、目的となる 運動公園に出発した。先頭がヤザワクラウンで、そのあとをついて行くような形であった。 ただ、集合時間に遅刻者が続出して、目的地までギリギリ間に合うかどうかという緊急事態であった ので、普段は安全運転のパンチ先輩もこのときばかりは法定速度をオーバーしつつ走っていた。 しかし、突然あるガソリンスタンドの脇にクラウンが急停車した。と、同時に運転席から慌てたように、 しかもなんだか苦しそうな顔をしたパンチ先輩がそのガソリンスタンドの事務所兼休憩室(というのか?)に 走り出した。 思わずイバも車から降りて「どうしたんですかぁ?」と声をかけた。するとパンチ先輩が 一言こう叫んだのだった。 「あっぱ〜!」 「・・??」なんのことかよく分からなかったのでもう一度聞きなおした。 「あっぱっっ!!」 「????」 わたくし全く理解不能であった。ボクシングでいうところのアッパーパンチを 想像してみたが、パンチ坂東先輩が狂おしい表情で事務所兼休憩室に腰をくねらせて走っていく理由とは、 正直いって全く結びつかない。 「あっぱ?って?ナニ?」 ハテナ顔のイバがそこにいた。それは例えるなら、ipodを突然手渡されたサルのような心境である。 そんなイバに、後部席に座っていた高校生のバイトの子が含み笑いをしながらこう教えてくれた。 「あっぱ≠チていうのは、ウンコのことっす」 世の中に方言というのはゴマンとあるが、このとき初めて知った超笑撃的な方言は、 今でも忘れられない。 しかもその語源や由来が、今でも全く解らないままである。 非常にビロウな名称を示す言葉なので、もしかしたら隠語なのかもしれない。 が、依然定かではない。 方言とは、誠に面白いものである。 |